高原のリゾートムード漂う
平成2年の普賢岳噴火で一時期は心配されたが、自然湧出(ゆうしゅつ)の古湯2、新湯34、小地獄1の泉源は今なお健在である。
いかにも温泉らしく、白く濁った硫黄の香りを漂わす泉質で、殺菌作用があり皮膚のかゆみを抑える。美肌効果もあるので女性向きの温泉といえる。また、含まれる硫化水素の作用で細い動脈が拡張するので、温泉の中でも特に温まる泉質であり、動脈硬化症に有効である。
目の前に迫る山々は、夏は緑に映え、秋は錦織りなす紅葉と化し、冬は水晶の精が舞うような霧氷に覆われ、晩春は「つつじ」で彩られるといった四季を通じて楽しめる温泉地である。
雲仙温泉の歴史は古く、約1300年前の「肥前風土記」に記載されている。もと「うんせん温泉」と書かれていたが、江戸時代から「雲仙」に書きなおされたという。
気候医学的にも保養に向く標高700メートルのこの温泉地は、明治10年ごろから多くの宣教師や在留外国人、ついで上海、香港、インドなどから、外国人たちが避暑に訪れるようになり、麓(ふもと)の海浜温泉地である小浜温泉とともに国際的な保養地となった。したがって、宿泊施設はモダンで街づくりも自然にマッチした温泉街を形成して、どことなく高原のリゾートムードが漂っている。
健康づくりの散歩コースが、地獄めぐりを含めて3つ整備されている。9ホール3200ヤードの日本最古のゴルフコースもある。21世紀の温泉保養地に向けて、再構築されつつある雲仙である。
(植田理彦・医学博士)