名物の湯滝や石風呂再開
ゴールデンウイークを過ぎても雪の残る吾妻連峰は夏スキーの人気スポットだ。その麓(ふもと)、標高800メートルの山間に湧(わ)くのが白布温泉である。
その湯歴は700年。湯治場として長い歴史を刻んできた。大きな茅葺(かやぶ)き屋根の曲屋(まがりや)が3軒並ぶ、その威容で全国から旅人を集めていたものだ。ところが平成12年、失火により3軒のうち2軒を焼失。
「やっぱり打撃でした。白布温泉に行く理由がない、とお客さんが来てくれないんです」。失った看板の大きさをあらためて痛感したと太田雅啓さん(47)は当時を振り返る。
「何とかしなければ」。地元の若手経営者が集まった。旅館も商店も同じ気持ちだった。22世紀に向かって、100年の町づくりを22軒の施設が手をとりあってやってゆこう、と「チーム22」を結成。平成14年事業としてはじめたのが「湯めぐり街めぐりクーポン」の発売である。
8軒の旅館と7軒の商店が参加。1000円で3枚綴(つづ)りのクーポン券を買ってもらう。参加する宿の風呂に1枚で1回入浴できるほか、余った場合は加盟商店で1000円以上の買い物をすれば1枚200円で使えるというシステム。
食堂、みやげ屋、ガソリンスタンドなどが参加しているので無駄はない。初年度は3000人の利用があった。「旅館に入りっぱなしだったお客さんが街を歩いて下さるようになり、活性化にもプラスになっています」と太田さん。
焼失したうちの1軒、東屋も昨年新築オープンした。名物の湯滝や石風呂が再開され、時代に合わせた露天風呂も新設され、白布温泉に新たな魅力が生まれている。
(竹村節子・旅行作家)