ツバキと紅梅白梅が歓迎
相模灘に向かって谷を開く湯河原温泉は、保養地として早くから知られた温泉地である。千歳川の流れが上流に行くにしたがって狭まり、明るい海洋性の風光から渓谷の風景へ、どんどん変化してゆく自然の変化の面白さは湯河原独特のものといえよう。この温暖な気候を利用し、v字渓谷の斜面にはミカンが栽培され、11月には早くも観光農園が開園している。
最近の湯河原町は「四季彩のまち・さがみの小京都」を標榜(ひょうぼう)し、訪れる客が通年楽しめる町づくりを進めてきた。
12月に入れば箱根を結ぶ椿ラインで5000本のツバキが可憐(かれん)な花を開き始め、1月下旬には幕山の湯河原梅林で4000本の紅梅白梅が見事な花と香りを堪能させてくれる。万葉公園に作られた広大な足湯「独歩の湯」や、立ち寄り湯の「こごめの湯」が人気で、週末を中心に日帰りの客が増えている。
こうした町の姿勢にあわせて、湯河原温泉おかみの会(平野洋子会長)でも、35人の会員が協力して「宿泊ガイド保存版/マップ&特典付き」を発行。これを見て予約、または宿泊の際に持参すると、各旅館独自のサービスや特典を受けられるシステムを今年から2006年7月末までの期限付きではじめた。コーヒーサービスの宿、宿泊料金が3000円引きになる宿まで様々。「不況の時代、女性もお役に立ちたい、という気持ちを形にしました」と平野会長。
増加傾向にある日帰り客に旅館の魅力を少しでもアピールし、宿泊につなげたいという女将(おかみ)さんたちの努力である。
(竹村節子・旅行作家)