アウトドアの楽しみ豊富
利根川の清流畔に湧(わ)く観光温泉である。旅館の間に射的屋や喫茶店、温泉饅頭(まんじゅう)の店などがごっちゃになっている商店街がまだ健在だ。
バブル期は他の温泉地同様に、団体歓楽型の温泉として名を馳(は)せたが、谷川岳という東日本指折りの名山を持ち、利根川の源流が貫流しているという環境が幸いして、近年はアウトドアスポーツを楽しめる温泉地としての方向性が定まってきた。水上町観光協会の須藤彦文専務理事も、「自然と山岳をベースに置いた観光地を目指してゆきたい」と明言する。
近年町内や諏訪峡など平場を案内するボランティアガイドを30人ほど育成。11月までは毎日、諏訪峡入り口にバスが到着する時間に合わせて待機させているほか、地元の山岳ガイド協会の協力を得て、天神平から谷川岳頂上までのトレッキングや一ノ倉沢へのハイキングなど、ビギナーでも安心して楽しめる山岳ガイドツアーも請けられるよう受け入れ態勢を整備した。
旅館個々でも女性専用フロアを設けたり、ペットと同室を可としたり、チェックアウトを翌日正午とするなど近年の旅行志向を踏まえて「個性化を図る傾向にあることは喜ばしいこと」と須藤専務理事の頬(ほお)もゆるむ。
観光協会としては町内周遊バス「温泉ぶらり号」を運行。500円で1日乗り放題で好評だ。最長は湯の小屋温泉まで往復できるほか、入浴施設の割引やお土産店や飲食店での優遇など、旅行客にとっての魅力づくりにも懸命である。
(竹村節子・旅行作家)