高原の露天風呂で夏の涼
樹木をそよがせて白根火山から吹き下ろす真夏の風は、心なしか緑を含んで涼しさを誘う。万座の温泉街に入ると、硫化水素の匂(にお)いがぷーんと鼻をつく。賽(さい)ノ河原からは、噴煙が上がり、湯畑状をつくって、宿の脇の小流れを硫黄を含んだ湯が勢いよく流れていた。万座温泉は豊富な湯が湧(わ)いている。
ここは標高1800メートルの高原だ。高台に立つと雄大な高原リゾートの景観が広がる。周辺は、シャクナゲやレンゲツツジ(花時は6月中旬)をはじめ、高山植物の宝庫である。
温泉は点在する宿に大露天風呂がそれぞれ設けられ、いずれも独自の工夫がこらされているから、まさに露天風呂天国だ。
静かな高原の温泉は、保養・休養を主体にした湯治客が訪れ、宿でもさまざまな湯治プランなどを打ち出している。
沢を埋めつくすようなでっかい露天風呂が自慢の万座高原ロッジを訪ねてみた。滞在型の「らくらく湯治プラン」を売り出して、連泊の保養客を誘っている。年輩者、家族連れなどが多いが、そんな中に若い2人連れなどもかなり目につく。各層に好評のようだ。
宿からクマザサの茂る斜面を下って、谷あいに広がった大露天風呂に目を見張った。水晶の湯、嬬取(つまとり)の湯など、数か所に分かれた浴槽に、緑色、褐色、乳白色といった、いろいろな色の湯があふれている。
姥湯(うばゆ)と空吹(からぶき)の湯の2つの源泉場から引いた酸性硫黄泉、80度前後の熱い源泉が適温に調節されている。売店でカラフルな湯あみ着を求めて着用すれば、混浴も自由。手を取り合って、露天風呂を楽しむカップルの姿がほほえましかった。
(野口冬人・旅行作家)