マイナスイオンたっぷり
舌がしびれるほど塩辛い温泉だ。「戦後の物資のない時代、塩を採ったことがあったほどです」と松之山観光協会長・柳靖治さん。
毎年3メートルは下らない積雪を見る、新潟県下でも有数の豪雪地。その山間に600年の歴史を刻む個性的な温泉だ。というのも塩分が濃くホウ酸の含有量が非常に豊富なところから、マイナスイオンが盛んに発散されており、空気を吸うだけでも健康に良いといわれる。昔から癬箘(せんきん)系の皮膚病に特効がある温泉として知られてきた。温泉の性格としては化石水温泉で、泉質としては塩化物泉。
海底の水が地殻変動等で地中に封じ込められ、水の化石となったもので、チリやメキシコ湾の石油と同様の生成過程を経てきており、火山性の温泉が多い日本列島では非常にめずらしい。したがって塩辛さも抜群だが、石油に似た匂(にお)いも持っている。この匂いも松之山温泉の特徴の1つである。
源泉は2本あり、一号泉が84度、昭和39年秋に掘削した二号泉が92度という高温泉だ。
谷沿いに17軒の旅館が湯町を作るが、そのほとんどが今も湯治客を受け入れる小規模旅館。シーズンというものは特になく、通年平準的に集客しているものの「集客率を上げたい」という思いは強い。「ブナ林の残る自然の豊かさを、もっと強くアッピールして、松之山のリゾートとしての値打ちを打ち出してゆきたい」と柳さん。
今年はその一助として「大地の芸術祭」に参加。特殊鉄板葺(ぶ)きの拠点施設「森の学校キョロロ」を7月20日にオープン。村内の自然や歴史、文化を知る森の学校友の会も発足させている。
(竹村節子・旅行作家)