通年型リゾートへの脱皮 目標
「温泉郷というひと括(くく)りのイメージでは、注目を集められなくなりました」
温泉地も旅館も強烈な個性化が必要だ、と説く林英一さん(51)。好きなように活動してよいという約束で、今年、新穂高温泉観光協会長を引き受けた。
槍、穂高といった名峰が連続する北アルプスの西麓(ろく)、蒲田川や高原川の沿線に湧(わ)く5つの温泉を総称して奥飛騨温泉郷と呼ぶ。安房トンネルの開通で松本と飛騨高山のターミナル的存在感を増している平湯、ひっそりとした古民家ムードの宿で売る福地、民宿の多い新平湯、釣り人やアルピニストの基地としての伝統を残す栃尾と新穂高。それぞれに性格は違っていても、北アルプスを背にする立地から、山岳観光基地というイメージが定着している。
したがって入山できる夏から秋にかけての季節営業的な色合いがどうしても強い。しかし熱い湯が豊富に湧き「露天風呂街道」の別称を持つほど、ほとんどの宿に露天風呂が整備されており、通年型の温泉リゾートとして対応可能な状態にある。
「個々が地域の差別化、宿の魅力作りを真剣に考えないと、観光競争に負けてしまう」
危機感を深める林さん。6月、新穂高温泉の若手経営者20名で勉強会をスタートさせた。あらためて自分の目線を磨き、自分の意見をまとめ、郷土にかける夢を紡ぎ出すための集まりだ。
一軒一軒の夢の実現が、一つ一つの温泉地を作り、それが新たな奥飛騨温泉郷としてのイメージを構成してゆくことを目指している。ガンバレ!奥飛騨温泉郷。
(竹村節子・旅行作家)