川沿いに7つの露天風呂
岩手、秋田、宮城の3県境にまたがる栗駒国定公園の焼石連峰、その山間の標高700メートルに湧(わ)き出す温泉地。ブナの原生林に囲まれた夏油川沿いに、自然湧出(ゆうしゅつ)の7つの露天風呂が点在する。6、7月は鮮やかな緑で埋め尽くされ、まさに秘湯の雰囲気があふれている。
痛みによい混浴の「大湯」、女性専用の「滝の湯」、胃腸によい混浴の「真湯」、婦人向きの「女の湯」「疝気(せんき)の湯」、渓谷が望める「新太郎の湯」など。そして奥行きが25メートルもある「石灰華の洞窟(どうくつ)風呂」。これは蒸し風呂であるが、今は見学だけで入浴はできない。
泉質は、ナトリウム・カルシウム―塩化物・硫酸塩泉で、源泉それぞれに成分濃度の違いがあるが、神経痛、筋肉痛、慢性消化器疾患、動脈硬化症、皮膚疾患、婦人科的疾患に有効で、江戸時代の温泉番付には東の大関として記載された湯治場であった。
食事は川魚と山菜の食材で素朴な山の宿。樹間を縫って遊歩道が設備されている。
元湯夏油には道を挟んで、旅館部と自炊部とあわせて8棟の建物が並び、小さな湯治場の町が形成されている。温泉町から徒歩30分のところには、国の特別天然記念物の石灰華ドーム「天狗の岩」がある。高さ17・6メートル、下底部径25メートルにおよぶ日本最大の石灰華ドームである。
安らぎを求めるには優れた温泉地で、3泊以上はしてみたい。11月中旬から5月中旬までは雪に閉ざされるため営業はしていない。
(植田理彦・医学博士)