神社への参詣客でにぎわい
弥彦神社の門前町温泉としての弥彦温泉は、昭和35年頃(ごろ)に源泉をボーリングしてはじまったもので、それまでは弥彦神社の門前旅館としての長い歴史を刻んでいた。したがって温泉としての歴史は浅いが、宿は昔から続く歴史のある老舗と、近年発足した新しい観光旅館とが入りまじっている。
弥彦神社の新年の初詣の人出は毎年大変な賑(にぎ)わいで、大晦日(おおみそか)から3日まで位は、毎年早くから宿の予約を取らないと泊まれないほどの混みようであるが、新緑の濃くなった今ごろは比較的静かだ。
弥彦温泉は、近くの観音寺(かんのんじ)温泉、岩室(いわむろ)温泉と合わせて国民保養温泉地に指定されているので、観光・行楽向きの宿と、保養・休養向きの湯宿とが混在している。長期滞在向きにもいい宿などもある。温泉は、単純温泉。源泉27度を浴用には加熱している。神経痛、リウマチ、切り傷、婦人病、疲労回復などの効果がある。
門前すぐ近くの元禄時代からの歴史を刻むという「みのや」に宿をとった。昔は湯治客が多かったというが、今日では弥彦神社への参詣(さんけい)客がほとんど。「女性のグループのお客さんが圧倒的に多い」とは樋浦智子常務の話。
鉄筋7階建てで、8階屋上に大浴場と露天風呂がある。大浴場の大きな窓の先には、蒲原平野が大きく広がり、左手のうっそうとした森の中には弥彦神社の赤い鳥居がちらっと望まれる。
(野口冬人・旅行作家)